◎実施レポート◎森美術館 「カタストロフと美術のちから展」編 2019.1.16

2019年最初のヨリミチは、森美術館の「カタストロフと美術のちから展」。
とても大きなテーマの展覧会です。プログラム冒頭、森美術館の白濱さんより、森美術館では節目の年に「ハピネス」「ラブ」と、普遍的なテーマを扱った展覧会を開催してきたこと、そして15周年の今回は、「カタストロフ(大惨事)」をテーマに据えたことをお話していただきました。それまでの生活が一変するような出来事があり、私たちは何かに左右されながら生きている。カタストロフに直面したとき、アートは何ができるのか、アートは何をしてきたのか、そんなことを考えられる展覧会です。

そんな展覧会のテーマを受け、ひとりでみる時間では「心をうごかされた作品」を選んでいただきました。どんな作品のどんなところがフックになるのか、トライアルで私たちが選んだ作品もそれぞれでしたが、参加いただいたみなさんが選んだ作品も、それぞれの視点、想い、経験などがあらわれていて、とても興味深いラインナップでした。
みんなでみる時間では、選んでもらった作品をグループでみながら、さらに対話をしていきます。

畠山直哉
「陸前高田 2011」シリーズ

前に来たときに、こ作品の前で涙を流している人がいた。その人も含めてこの作品がある、という感じがした。

平川恒太
《ブラックカラータイマー》

遠くからみたときは、黒い丸が並んでいる。それくらいにしか思わなかったけれど、近づいていくにつれ、そこに黒く描かれた原発作業員の姿があり、黒い丸からは時計の時間を刻む音が聞こえてくる。作品が内包する〈こわさ〉が徐々に現れてきて、最初の印象との差が大きくなる。

池田学
《予兆》

大きな波のようにも見えるし、山の崖のようにも見える。人々の暮らしを飲み込むような大きな力、東日本大震災よりも前にどんなことを思って描いたのか。これだけの複雑な作品をペンとインクだけで描いているところも興味深い。

フェリックス・ゴンザレス=トレス
《無題(始まり)》

ただ安っぽいビーズのカーテンをくぐるだけなのに、こちらとあちらの世界があって、何かが違う感じ。くぐってみたくなる、そうさせる作品。

CATPC&レンゾ・マルテンス
《私の祖父はどのように生き残ったか》
《無題(セダール・タマサラによるドローイング)》

闇がある。チョコレートという素材にも驚いたけど、版画の方も気になるところばかり。この作品で何を伝えようとしているのか、考えたくなる。

ヒワ・K
《鐘》

日本でも戦争中にお寺の鐘や銅像を集め、溶かし、武器にしていたことがあるが、その逆の発想がいいと思った。

 

どの作品も、作家の思いや願い、衝動、使命感などが込められています。現代美術はわかりにくいと言われがちですが、どれも真っ直ぐに伝わってくるなぁと思いました。それらを受け止めて、後半のカフェタイムです。

各グループで話したことを共有しつつ、印象的だったことについて話します。

・震災直後の様子を捉えた写真と、震災から時間を経た写真とでは、後者のほうがよりアーティストの目線というものを強く感じた。

・災害とか事件とかがあっても、どこか客観的になっていたり、造形の美しさに目がいく。不謹慎というわけでもないけど、アートにはそういう面もあるような…。

そんな話題があがりました。

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最後にちょっと聞いてみたかったことを訊ねてみました。展覧会のテーマでもある、「美術のちから」についての問いかけです。

「わざわざ入場料を払って、時間を割いてまでして美術館に行き、展覧会をみる。そこまでさせるアートの作用っていうのは、みなさんにとってどんなものですか?なぜ、そこまでしてアートに触れようとするのですか?」

みなさんから語られたのは、

・自分も絵を描くので、自然と見に行く。見に行くのはやっぱり絵画が多い。

・出会ったことのないものに出会うため。知らない作家ほど見に行く。

・事故に合うみたいな感じ。

・年間パスポートを持っているから行く。そうすると意外な出会いがあったりする。

・その地を訪れると必ず会いに行く作品がある。おじいちゃんが子どもに注ぐ眼差しがとても好きな作品。

などなど…。
それぞれにアートとの付き合い方があり、美術のちからをうまく生活の中に取り入れているんだなぁと思いました。
(ちなみに私は、自分の調律をするために展覧会へ行き、その時の気分に合わせて見るものも変えます。なのでこんな取り組みが気になっています→ストレスの処方薬? カナダでアートを治療として使う試みが始まった

ここで終了時間を迎えてお開きとなりましたが、もう少し話したい!というみなさんと一緒に、好きな作家についてさらにもうひと盛り上がりしました。

ちょっと重ためのテーマの展覧会へのヨリミチでしたが、美術のちからが効いているなぁと実感できる夜でした。
ご参加いただいたみなさん、素敵な時間をありがとうございました!また会いましょう〜!

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writer:こんどう のりこ

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