「VOCA展2019 現代美術の展望 -新しい平面の作家たち」でのヨリミチミュージアムは今年も春分の日に開催しました。
テーマは毎年恒例となっている「ヨリミチ賞」の選考です!
なんとVOCA展でのヨリミチミュージアム初となる、参加者全員が違う作品を選ぶという嬉しい事態!魅力的な候補作ばかりで、どのチームもヨリミチ賞の選考が難航したようです。
まずは「ひとりでみる時間」
ひとりで鑑賞し1作品を選びます。ひとつひとつの作品を順番にじっくりと見たり、全体を見ていくつかの気になる作品を行ったり来たりしたり、皆さんご自身のスタイルで作品と向き合っていました。

そして「みんなでみる時間」
選んだ作品をチームのみんなと鑑賞します。自分自身は全く気に留めていなかったのに、選んだ理由を聞いてはじめて気が付く作品の姿や、そこに隠されているかもしれない意味を語り合い、驚きの多い時間になりました。
中島麦《luminous dropping》 白井晴幸《panoramas》
最後に「カフェタイム」
それぞれのチームで候補にあがった中から1作品を選ぶ時間です。平面と謳いながら立体感や反射、テクノロジーを上手く使った作品もあり、平面とは何なのかと考えるような場面もありました。

それでは、選ばれた3作品と贈られた賞の発表です!
「ここじゃなきゃ賞」
《アテネ・長野・東京ノ壁二アルデアロウ模写》 東城信之介
大きな作品に様々な要素が表現されていて、人によって見つけるもの、それの捉え方が異なる。描き方から世界の広がりや時間の経過を感じることが出来た。実物には不思議な奥行きがあるかのように制作されているのに、図録に載っている写真にはそれが表現されていない。作品の目の前でこのメンバーだからこそ見えたものや共有できたことが沢山あった。

「余白賞」
《shuttles(f[flower])》堀至以
第一印象は描いてあるものが見えそうで見えてこないことに不安を感じた人もいた。花の周りの余白のような部分が内側の曖昧とした何かを一層際立てる。見ているうちに自分の記憶と繋がり走馬燈のように感じられ、花のシルエットも効果となり生と死を想像した。作品の前で立ち止まり、向き合う時間や気持ちの余白がある人にだけ沢山の何かが見えてくる作品だと思った。

「十人十色で賞」
《花のたとえ、嵐のたとえ》 田中武
無機質な背景の中に語りたくなる要素が多く描かれている。人によって描いてあるものの捉え方が異なり、カーネーションが除染袋を隠す役割をしているように見える人、被災地への贈り物に見えた人もいた。花が弾けている部分にも意図を感じる。カーネーションが育っている様から時間の経過を表しているように感じた人もいた。

最後に上野の森美術館の坂元さんにみなさんの選んだ作品と選んだ理由をご紹介し、コメントをいただきました。
今回もそれぞれの視点で作品を楽しむ皆さんの意見を聞くことができ楽しい時間となりました。
来年のVOCA展も楽しみです。

writer:なかしま のぞみ