

まだまだ暑さの厳しい8月31日(土)夕方、初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催中のジュリアン・オピー展で、ヨリミチミュージアム ミニを開催しました。最後に「ミニ」の二文字を加えたのは、これまでの半分の一時間で楽しむプログラムとしたからです。
まずはひとりで会場を見て、他の参加者と一緒にみたい作品を選びます。一作品に絞り込めなければ、何点かリストアップもありです。このギャラリーの会場は比較的コンパクトで、細かい仕切りも設けず、 作品点数も27点と、会場の把握は容易でした。30分ほどそれぞれひとりでみたあと、集まってみんなで見ていきます。
最初の展示室では、まず作品サイズが話題になりました。入ってすぐ目に入る場所に高さが6メートル近くある大きな作品が二点あったからです。線や面は思いっきり単純化されているのだけど、それにもかかわらず着ている服の厚みや重みがしっかり感じられ、服装から「冬に違いない」と季節感の話になりました。半袖半ズボンの人がひとり混じっているけど、ときどきそういう人はいるから、かえってリアル。


その対面にあったアクリルのポートレートでは、どんな人物(キャラクター)かで話が盛り上がりました。「この男性は、50代のジャズミュージシャンだと思う!」と、相当ピンポイントなイメージです。言われてみると、たしかにそう思えてきます。頭部には目・鼻・口すらなく、表情も描かれていないのに、微妙なうつむき加減で人によっては少し元気がなさそうに見えたり、特定の誰かに似ていると感じたり。いったいどこにそれだけの情報量が潜んでいるのでしょう。



次の展示室では、四面に何人もの歩行者が描かれた角柱が一番のお気に入りという話から始まりました。それも特定のアングルが一番しっくりくるのだそうです。みんなそのポイントから眺めてみて、「確かにバランスがいいね!」と納得。よく見ると柱の角の部分に、二面をつなぐ細かい処理が施されていることも目に入ってきます。「人物の肌の色が全員違う」という話も出ました。 いろいろ気づきが広がるのも、他人の目で見る楽しさです。


写真からも見て取れるように、歩く人物をモチーフにした作品が多数派です。中には動画作品もあるのですが、あるとき、その前を横切った人が一瞬作品の中の人に見えました。それを口にしたら、「私もそう思った!」と即座に印象を共有できたのも、ちょっと嬉しくなる出来事でした。
遠目に(もしくは写真で)見ると一見ごくフラットに見える作品も、近づいて見ると色ごとに積層された立体構造を持っていたりします。とくに風景画は最大4層ほど重ねてつくられていました。 横から見ると重ね具合がよくわかるのですが、その仕上げ方には、絶対横から見られることを意識しているな、というこだわりを感じます。凹凸の使い方も、電線が凹み、つまり溝だったり、鳥には凹凸二種類あったり、ちょっと意外で「発見」感がありました。立体感はオピー作品の「実物」を見るときの見所の一つかもしれません。





ほかにもカラスやヒツジの作品を前にいろいろ話は尽きなかったのですが、残念ながらそろそろ予定の時間です。最後にひとことずつ感想をいただいて、今回のミニプログラムは終了です。


のちのアンケートでは、「展覧会がより強く印象に残る気がしました。」「ミニプログラムだったのですが、参加人数も少なかったこともあり、とても満足。」あるいは「仕事帰りにもちょうど良い尺なのでは?と思いました。」との感想をいただきました。
今回やってみて、規模の大きな展覧会で開催するには時間が足りないかもしれませんが、展示とグループの人数をうまく選べば、ミニプログラムでも楽しんでいただけるという自信がもてました。今後のミニプログラムにもご期待ください。
ところで、ジュリアン・オピーのウェブページには、ジャンルと制作年で分けられた多数の作品画像がまとめられていて、かなり見応えがあります。そして、この展覧会そのものがすでに写真入りで紹介されていました。オピーさん、かなりマメな方なのかもしれませんね。
Writer:はかたとしお